雨季の果物グラトーン(Santol)。夏蜜柑ぐらいの大きさで薄茶色、ビロードのような手触りの果実は6月から7月にかけて旬を迎えます。果肉は酸味に甘みと渋みを重ねた味わいで独特の芳香があり、食感は強いて言えばかための柿か桃でしょうか 。五つの種を包む綿のような白い果肉はつるりとした繊維質で、外側の果肉より甘めです。
グラトーンกระท้อน、英名サントール(Santol)、別名コットンフルーツ。種の周りの果肉が白い綿のよう
ローイゲーオはシロップづけの果物のデザートのことで、サラ(Salacca)やライチなど酸味のある果物の他に、ルークターン(オウギヤシのゼリー状の胚乳)などでも作ります。シロップづけですから甘いのですが、果物はたいてい塩水で下づけするので、甘しょっぱいのが特徴。塩気のあるシロップづけの果物に砕いた氷をのせて汁ごといただく、そんな食べ方は蒸し暑い土地柄では理にかなっています。そう言えば、キリンのソルティライチはローイゲーオからヒントを得た清涼飲料水。検索すると「おいしい熱中症対策飲料」とありました。
グラトーンを塩水につける時間は20〜30分と言うのは近所の青果店の店主、レシピの本では半分にカットしたものなら3〜4時間、いきつけの食堂は2晩、星つきのレストランで尋ねると風味が失われないように5分だけとまちまちでした。塩水の下づけは変色を防ぐとともに渋抜きになるということなので、私は一昼夜つけることにしました。
今回は花の形になるように、グラトーンの真横に包丁を入れ、かたい種も断ち切って横半分にカット。種の周りのもこもこした部分をできるだけ残しながらナイフの先で長い種を切り取ると、真ん中の白い果肉が5弁の花のようになります。それを下づけして水で洗い、シロップに一晩つけて出来上がり。シロップで煮るというレシピもあります。以前クレット島で見たグラトーン・ローイゲーオは表面に浮き彫りがあしらわれていました。ほのかに朱を帯びた果肉にタイらしい模様が浮かぶ、その繊細な美しさに見とれたことが、旬を迎えるたびに思い出されます。
手前の小さくカットしたグラトーンは塩水づけのあとシロップに一晩つけたもの。奧は塩水につけたばかりの花の形のグラトーン。 種の周囲の果肉を切って種を抜くと、白いもやもやした部分がふんわりして5弁の花びらのようになる
さて、グラトーンを食べるときの豆知識をひとつ。皮をむく前に実をたたいたり、むいてからギュッとひねったりすると甘みが増すと言われています。タイでは砂糖に塩とトウガラシの粉を混ぜたものやココナッツシュガーベースの甘辛ディップを添えて食することが多いのですが、ヤムやソムタムという和えものやタイカレーなどの料理にも用いられます。
写真左:グラトーン独特の香りが溶け出したシロップはさわやかで味わい深い
写真右:砂糖・塩・トウガラシ粉で和えたグラトーン。カットフルーツも売るトラックの移動青果店で購入
カフェの季節限定メニューにグラトーン・ローイゲーオ味のフラッペとかき氷が。バンコクを中心に複数店を展開するデザートカフェAfter youのポスターから
文・写真/ムシカシントーン小河修子