きっかけはタイ vol.8
タイから繋がるライフストーリー
小堺 友美 さん
◆ベビー&キッズマッサージ・ベビーヨガ教室主宰
自宅教室にて
愛情をもってふれることの
素晴らしさを確信したタイ。
Q あなたにとってのタイとは?
"自分らしさ"を見つけることができた瞬間
Yumi Kozakai
1975年生まれ。上智大学文学部教育学科卒業。16年間の会社勤務の後、2014年4月、4歳と6歳の子どもとともに帯同家族として渡タイ。約4年間バンコクで暮らし、日本人会などでベビーマッサージを教える。帰国後、神奈川県藤沢市の自宅でベビー&キッズマッサージ・ベビーヨガの教室「2525 with you (にこにこウィズユー)」を主宰し、ベビー&キッズマッサージのクラスや指導者養成講座(通学・オンライン)を開催。

HP:https://www.2525withyou.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/2525withyou/
人生を見つめ直した時
ー なぜベビーマッサージを?
大学卒業と同時にサントリーに就職し16年間勤務していました。その間に結婚して子どもを2人もうけ、4年間の育休取得後、職場復帰したのですが、通勤に片道1時間40分。走るように帰って保育園に迎えに行き、座る間もなく夕飯を作って食べさせるという毎日。上の子が小学生になってもこの生活を続けるべきか悩みました。そこでこの機会に人生を見つめ直してみようと。どう生きていきたいのか心の声に耳を傾けて、よくよく考えてみたところ、私は子どもが好きで、赤ちゃんにかかわることをしてみたいということに気がついたのです。大学時代も教育学科を専攻しており、特に幼児教育に興味がありました。赤ちゃんにかかわることを調べていて出会ったのがベビーマッサージでした。
ー 赤ちゃん関係の仕事は他にもありそうですね。
保育士などもありましたが、でもそれ以上にこれだ!とピンときたのです。ちょうどタッチセラピーの世界的な権威ティナ・アレン先生が来日すると知り、ベビーマッサージはティナ先生の講習を受けました。ベビーマッサージを含むタッチセラピーは研究が進んでいる分野で、赤ちゃんだけでなく、医療ケアが必要なお子さんのためのセラピー、発達障がいのお子さんのためのセラピーなどもあり、アメリカでは100以上の病院で導入されている手法でもあります。
ー 教室開設の準備は着々と進んでいたのですね。
会社にも辞めることを伝えて、大好きな湘南で自宅教室を開く準備を進めていたある日、急に夫のタイへの転勤が決まりました。もうびっくりして動揺しました。でも、自宅教室はひとまず諦めてタイを楽しもうと気持ちを切り換え、2014年4月に引っ越しました。
日本人会別館のベビーマッサージ教室
 
バンコクのプレイグループでのクラス
 
ふれて親子のきずなを深める
ー バンコクで教えることになったきっかけは?
せっかく身につけた知識や技術を活かしたいし、必要としている人も多いのではないかと思い、日本人会別館の窓口で相談したら、様々な活動をされている方がいるとのこと。チラシを掲示板に貼ったところ希望者が集まり、初めてのクラスを開催しました。
ー レッスンはどんなふうに?
まずは自己紹介。次にマッサージオイルのアレルギー反応をみるパッチテスト。その間、ふれあい遊びをして、次にベビーマッサージです。3回コースで、脚、お腹、胸、背中、腕、顔と全身のマッサージを順に行っていきます。マッサージの後はママ同士でおしゃべりしたり交流も。
ー ベビーマッサージにはどんな効果があるのでしょう。
愛情をもってふれることで、幸せホルモンといわれるオキシトシンの分泌が促され、心と身体がリラックスします。眠りに入るのが早く、睡眠が深く長くなるとも言われています。そのほか、脳や神経の成長を促したり便秘を改善したり免疫力を高めるなど、様々な効果が期待できます。  
何よりも良いのは、親子のきずなが深まること。ママやパパは日々のお世話に追われて、しっかり目を見つめ合ったりコミュニケーションをとるということが結構少ないものです。マッサージをすることによって改めて赤ちゃんと向き合い、やわらかいお肌や赤ちゃん自身を感じることで、さらに愛おしくなり、心がやすらぐのです。
気持ち良さが伝わってきますね。自宅教室にて
ー 確かに子育て中はしなければならないことが多くて向き合う余裕がなくなります。
日本でベビーマッサージを学んでいた時、当時6歳と3歳の自分の子どもにマッサージをしたら、子どもたちの気持ちがとても安定したのです。それは、ママが自分だけに向き合うことで愛されている実感を得て心が満たされたからですね。保育園の先生にも「お母さん、最近何か新しいことを始めましたか? 〇〇くん、この1か月とても気持ちが安定しているんです」と言われて、効果を確信しました。1日5分でもそういう時間を持てるのは素敵です。母である私にとってもかけがえのない時間でした。いつも仕事で忙しくしていて、子どもに対して後ろめたい気持ちを感じていたのですが、マッサージはそれを緩和してくれる貴重な時間でしたし、これでこの子とは大丈夫という自信が生まれました。
ー だから働くママにも伝えたいのですね。
そうなんです。ただし子どもといえども、マッサージしてもいい?とまず聞くことが大切で、それはティナ先生に最初に教わったことでもあります。子どもの気持ちを一番に優先することが基本。ひとりの人間として尊重され、大切にされていると感じることが自己肯定感を高め、その子らしく生きていく力になります。
タイで教えた経験が自信に
ー 日本人会以外では?
病院からお声をかけていただいたり、様々な国の親子が参加しているプレイグループでクラスを担当したり、思いがけず様々な場所でベビーマッサージを伝える機会があり、約4年間に450組の親子にお会いしました。教えることの楽しさや喜んでもらえる嬉しさを味わえる素敵な経験をたくさんさせてもらえ、様々な学びを得ることができました。
ー 現在は?
自宅での教室以外に、児童館の子育て広場や親子カフェで教えたり、サントリーでタッチケアについてお話させていただいたことも。児童館のクラスは、市役所に行きボランティアでもできることはないかと相談したことから始まりました。タイの経験からベビーマッサージの良さとそれを伝えることが大好きという確信を深め、それが自信になり、私の背中を押してくれています。


ー これからの目標は?

愛情をもってふれることの素晴らしさを色々なかたちで伝えていきたいです。赤ちゃんだけでなくキッズ向けのタッチケア講座にも注力していきたいですね。もう一つは、たくさんの方に知っていただく意味でも、オンラインでのベビーマッサージ指導者養成講座やタッチケア講座も始めましたので、そちらも広めていきたいです。


ー ありがとうございました。
 
木漏れ日の差す自宅教室で、やさしくふれて見つめ合って、ママも赤ちゃんもリラックス

 
取材・文/ムシカシントーン小河修子
写真/小堺友美さん提供
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