きっかけはタイ vol.12
タイから繋がるライフストーリー
相部 開哉 さん
◆慶応義塾大学ラグビー部前主将
キッズチームの経験が
主将としての僕の糧になった。
Q あなたにとってのタイとは?
私にとってタイとは
"人生のアクセント"
Kaito Aibe
1999年千葉県生まれ、神奈川県平塚市育ち。ラグビー好きの父親の影響で小学1年生からラグビーを始める。父のタイ赴任に伴い2008年10月にバンコクに移り小学4年時に日本人学校に転校、小学6年から中学2年の終わりまでインターナショナル校で学ぶ。在タイ中、日本人会ラグビー同好会キッズラグビーチーム(BJKIDS)に参加。帰国後、慶応義塾高校から慶応義塾大学に進み、昨年、150人のメンバーを擁す慶応大学ラグビー部の主将を務めた。2021年4月から商社勤務。

- ラグビーはいつから?
小学1年です。ラグビー好きの父の影響で、土日に地元の茅ヶ崎ラグビースクールに通っていました。最初は友達と遊ぶのが楽しみで練習に行っていたような感じでしたね。ラグビーのおもしろさを知ったのは小学3〜4年くらいかな。県大会に出るようになって優勝を経験して、チームスポーツって楽しいと。ラグビーはどのポジションであってもボールに触ることのできる種目で、チームで勝つことに喜びのあるスポーツです。


- 楽しさを知った頃タイに?

はい。小学4年のときに父のタイ赴任に伴いバンコクに来て日本人学校に。ラグビー同好会にキッズチームがあることを聞いていたのですぐに入会しました。
バンコクではラグビー同好会のキッズラグビーチーム、インター校のラグビークラブなど複数のチームに参加
他人のベクトルで考える経験
- キッズではいかがでしたか?
キッズチームは人数が少なかったので、小学高学年以上はいっしょに練習して、ラグビー初心者も多かったです。日本では自分にベクトルを当てていればよかったのですが、初めての子がいるとその子がうまくなるにはどうすればいいか考える。日本では教えたことはなかったけれど、自分がリーダーになってメンバーに教える立場を経験しました。その経験がプラスになっています。小学6年からはインターナショナル校に転校し、週日は学校のラグビークラブ、土日は同好会キッズで練習、それにライオンズという外国人主体のチームでもプレーしていました。
- インター校での生活は?
インター校には様々な国の子がいて、カルチャーショックを受けました。たとえば日本人学校では他の国の子と食事をする機会はないじゃないですか。でもインター校はカフェテリアがあっていろんな国の子たちが食事をしている。その中でイスラム教徒の子はハラルフードを持ってくるんです。厳しく戒律を守っているんだなあと小学生ながら驚きました。最初は英語での授業についていけなかったし大変でしたよ。でも半年くらいで慣れました。中学になったとたんに課題もパソコンだし、パワポでプレゼンする。日本では授業といえば座って聞くことでしたが、インター校ではアウトプットすることが多かったです。様々な文化に触れて価値観の多様性を肌で知ったことは、自分の考え方に影響を及ぼしたと思います。英語の能力を引き上げてもらったことも含めて感謝しています。
- 帰国後は?
中学3年から日本に戻り、地元神奈川県の慶応義塾高校に進みました。高校からはどっぷりとラグビー生活で、月曜以外は授業が終わってから6時まで練習。土日も午前中に練習した後、午後はウェイトトレーニングという毎日です。部員のみんなといるのは楽しかったし、きつい練習の後に爽快感があって、苦ではなかったです。
練習で補う泥臭いチーム
- その後慶応大ラグビー部に。
そうです。大学のラグビー部員は150人くらいいて競争が激しいのですが、1年の秋の公式戦でメンバーに。僕は高校からロックというポジションです。慶応はスポーツ推薦を採らないので、全国から才能のある人が集められたチームではありません。それを練習で補う。ひたむきに練習する泥臭いチームで、スター選手もいません。身体の小さい人が大きい人に勝つにはどうするか、それを常に考え練習してきた歴史が慶応にはあり、それが強みです。身体の大きい人に勝つには体勢を低くして足にタックルするんです。

 
2020年度関東大学対抗戦 対 明治大学戦
- 大学3年で主将に選ばれて取り組んだことは?

私生活でも規律を守ること。遅刻しないこと。部屋をきれいにしておくこと。人として当たり前のことを徹底する。そういうところをしっかりすると試合の結果につながるのではないかと思って。ラグビーは激しくて辛いスポーツです。身体の大きい外国人が突進してくると避けてしまう。メンタルで試合が左右されるといわれています。ビビるとどんどん負けてしまう。メンタルを鍛えるには、きつい練習をした後さらにフィットネスで鍛えて限界を突破する。辛い練習をやりきったことが自信を生み、その繰り返しが成長に繋がると思います。ひとりではできない激しい練習も互いに励まし合うことでやり遂げられます。


- コロナ禍での練習は?

昨年4月から6月まで練習できなかったのはきつかったですね。各自に身体づくりのためのトレーニングメニューを渡し、Zoomでミーティングをして対応しました。グラウンドで練習できるようになってからも、感染者を出さないために、試合に出るメンバーをメインに寮に入ってもらいました。10月の初戦から12月まで7試合ありましたが、20人くらいはいっしょに練習できませんでした。
 
2020年度関東大学対抗戦 対 筑波大学戦
第57回全国大学ラグビーフット ボール選手権大会 準々決勝 対早 稲田大学戦(2020年12月19日)
- 厳しい状況下での全国大学ラグビー選手権大会でしたね。
12月19日に準々決勝に進み、早稲田に負けました。入学してから早稲田には一度も勝てなかった。慶応が公式戦で早稲田に勝ったのは10年前です。慶応はディフェンスが得意で、低く前に出て止める。一方、早稲田はグラウンドを大きく使うチームでボールを運べる選手も多い。そういったことからか相性が悪いとされています。ベストゲームではなかったので、くやしいところはあるけれど、相手のほうが実力が上でした。やるべきことはやったし、力を出しきれたのでしょうがないなという気持ちです。
- 今年から社会人ですね。
商社に就職が決まっています。タイに住んでいたこともあって海外で仕事をしたいという気持ちと、天然ガスなど日本のインフラを支える大きな規模の仕事をしてみたいという思いで志望しました。
- 夢は?
海外に暮らす機会があったら、地元チームでラグビーをしてみたいですね。
- ありがとうございました。
取材・文/ムシカシントーン小河修子
写真/相部開哉さん提供
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