最初は2000年から6年間です。結婚して数年経った頃「海外に住めるといいね」と主人と話していたこともあって、タイ赴任が決まったときにはバンザイしました。当時上の子が2歳で下の子を妊娠中。子ども中心の生活で、育児に疲れていたのかもしれません。何か新しいことをしたい、今とは違う生活をしたいという希望に近い気持ちだったのかもしれませんね。
独身の頃、六本木(東京)のタイ料理レストランで食べたグリーンカレーが初めてでした。あまりに辛くて、それ以外のことは記憶にないんです。辛いものが苦手で…。バンコクに来てから食べたい時にタイ料理が作れたらと思うようになり、月に1度、6〜7人で教わっていました。教室で作って食べるだけでしたが、習うことでタイの調味料や材料を知り、タイ料理の奥深さを知りました。それでとりあえず資格を取っておこうと、人気があったワンディー先生の料理学校の40時間コースに。他にも何人かの先生に師事し、有名な五つ星ホテルの1日コースなどにも参加して、一流の盛りつけやもてなしを学ぶことができました。フルーツカービングも受講して修了証をいただいています。
ー アクティブですね。
興味のあることはとりあえずやってみるというのがモットーなんです。やってみなければ始まらないですから。タイ舞踊を始め他にもいろいろチャレンジしました。
写真①:ワンディー料理学校の修了日、ワンディー先生と(2003年) 写真②:シャングリラホテルの1日クッキングスクール(2003年頃) 写真③:タイで始めたタイ舞踊は日本でも続けて公演に参加
自宅教室の誕生
写真④:Mako先生のスタジオで開催した出張料理教室 写真⑤:自宅教室で生徒さんたちと 写真⑥:自宅教室のテーブルコーディネート
ー タイ生活の後、すぐに料理教室を始めたのですか。
帰国して、持ち寄りの食事会にタイ料理を作っていくと、みなさんおいしいと褒めてくださる。教えてほしいという友達がひとを集めて、初めての料理教室を開きました。それが2回、3回と続き、雑誌に記事が掲載され、仲間うちの教室だったのが「公」に。背を押されて始めた教室でしたが、やってみたらとても楽しくて、2008年に屋号を登録し、Arhan Thai Yoko Sabaai Cai(アハーンタイ ヨーコ サバーイジャイ)が誕生しました。
ー 料理教室の内容は?
タイ料理2品の写真つきレシピを用意して、生徒さんと作って、みんなで食べるという4時間コースです。デザートは作っておいてお出ししていました。メニューは100種くらい。リピーターが多くなり増えていきました。教室に来てくださった方には、料理だけではなく「タイ」を知ってもらいたくて、ローカルなお店や市場の楽しさを紹介したり、タイ文化や生活全般の話題を取り入れるようにしていました。教室以外にもワークショップに招かれたり、友達のお店のオープン記念パーティーでタイ料理を作ったり。ヤムヤム・ソウルキッチンというNPOが、47都道府県の名産品でタイ料理を作るプロジェクトを企画しているのですが、お声をかけていただきハタハタなど秋田の食材で60〜70人分のタイ料理を作ったこともあります。
ー タイ料理によって以前とは別の生活になっていたのですね。
帰国後は教える活動とともに、タイ料理の先生方の教室や「きょうの料理」や「あさイチ」でお馴染みの家庭料理研究家Mako先生の教室に通っていて、そのうちにMako先生からお声をかけていただきお手伝いすることに。私、アシスタントが向いているようですよ。先生が次に何をするか予想して、手際よく動くことができるみたい。先生の料理本にアシスタントとして名前を載せていただいて、とてもうれしかったです。撮影現場はすごく楽しいです。
2度目のタイは「舌と目を肥やす」
ー タイ料理家として歩み始めていた時にまたタイ赴任に…
はい。帰国してから9年間、我が家はタイの話題でいつも盛り上がっていたので、また住むことができたらという思いは家族全員が共有していたものでした。 念願のタイ生活でしたが、最初の1年はウジウジしていたんですよ。日本で仕事が軌道に乗り充実していたのに、タイでは仕事ができない。タイ料理仲間が活躍している様子を見聞きするたびに落ち込んで。でもある時「日本にいる人にはできないことをたくさん経験できるでしょ? うらやましいわ」とおっしゃってくれた方がいて、それで吹っ切れました、2度目のタイは、より多くの料理を食べること、知らなかった料理に挑戦すること、スクムビット界隈にとどまらず、友達を巻き込んで楽しみながら食べ歩いて舌と目を肥やす。そう心がけることにしました。
ー その成果がSNSですね。
以前から書いていたものを食べ歩き中心にして、できるだけ毎日アップするようにしていたら、数えてみたところ875本に。話題は生活全般に及んでいます。 お店の選択ですか? エリアを決めてすべてのレストラン・食堂の評価を検索して、これぞという店を選んだこともありました。ウォンナイという食べログのようなサイトがあるのですが、それを読みたいがためにタイ語が読めるようになったんですよ。ウォンナイは私のタイ語の学校でした(笑)。
ー 今後やってみたいことは?
タイ料理やレストランの紹介だけではなくて、私が知り得た情報すべてを盛り込んでなんらかの形に残したいですね。パワフルでイキイキしたタイの魅力を伝えたいです。
ー ありがとうございました。
取材・文・写真※ /ムシカシントーン小河修子
※以外の写真は松井陽子さん提供