楚々とした姿に惹かれて買って以来、タコーは私の内なる「タイの美しいもの図鑑」に収録されています。
白くなめらかな表面は淡雪羹にも似て、つい眺めてしまうのは、新雪に触れるのをためらう心持ちでしょうか。なだらかな雪原を支えるパンダンの葉の器〈グラトン〉を手にのせると、細長く並行して走る葉脈が同系色の縞模様を描いていることがわかります。質感がマットなのは、葉の裏側が表に出ているから。ツヤのある表面は内側です。
タコー・プアクのプアクはタロイモのことで、白いココナッツクリームの下のフィリングはとろりと煮たタロイモです。トウモロコシとタピオカ、クワイ、若いココナッツなどを緑豆デンプンでまとめたフィリングもそれぞれタコーの定番です。
味わいは具材によって少々変わりますが、下部はシンプルな甘みが基本。対して上層のココナッツクリームは隠し味と言うには強めの塩気があります。ココナッツミルク、砂糖、塩、米粉を加熱しながら煉った白くなめらかなクリームですから、その形状を見たら我々異邦人は当然甘いと想定する。なので、口に入れて軽く驚くことに。この甘しょっぱさの加減がタイスタイルの塩梅なのです。
グラトンを分解してみると、葉に4本の切り込みがあるだけでした。20センチ程度の長さに切り揃えたパンダンの葉に等間隔に入れた切り込み、その4点で切り口を葉の上に重ねながら直角に折っていくと直方体になります。それをマイグラットという細い楊枝や糸でとめるのが昔ながらの正統派ですが、ホチキスどめもよく見かけます。バナナの葉のグラトンや陶器などに入れたタコーもあって、それぞれによさはあります。ですが、私はやはりパンダンの信奉者です。
パンダンの葉に4本の切り込みを入れて折ると四角い器に
パンダンの葉はタイ語でバイ・トゥーイ。タコノキ科の植物で学名はPandanus amaryllifolius。和名はニオイタコノキ。タイをはじめ東南アジアや南アジアなどで、色と香りが菓子や料理に用いられています。熱を加えると強くなる香りは、甘いような、炊き立てのご飯のようなフレーバーで、ハーブティーとしても飲用されています。